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■1 双極性障害とは何ですか?
■2 どのように診断されるのですか?
■3 双極性障害の症状はどのようなものですか?
■4 双極性障害のパターンとは何ですか?
■5 双極性障害と混同されたり併発する精神医学的状態はありますか?
■6 双極性障害はいつ始まるのですか?
■7 できる限り早い時期に双極性障害を診断し治療することが大切なのはなぜですか?
■8 双極性障害の原因は何ですか?
■9 双極性障害は遺伝しますか?
■10 双極性障害はどのように治療するのですか?
■11 薬剤の種類はどういうものがありますか?
■12 気分安定薬とは何ですか?
■13 抗うつ薬とは何ですか?
■14 抗精神病薬とは何ですか?
■15 急性躁病エピソードに対する気分安定薬の選択は何ですか?
■16 気分安定薬はどれくらい速く効きますか?
■17 急性うつ病に対する抗うつ薬の選択は何ですか?
■18 電気けいれん療法はどのようなものですか?
■19 どのようなときに入院が必要になりますか?
■20 治療に役立つことはありますか?
■21 治療をやめたいと思うときはどうすればよいですか?
■22 どの位の頻度で医師と話せばいいのですか?
■23 精神療法にはどういうものがありますか?
■24 双極性障害の現状は?
■25 双極性障害の位置付けは?/a>
■26 障害の診断は?
■27 遺伝は?
■28 維持療法は?
■29 向精神薬の概念は?
■30 BPⅠとBPⅡの疾病概念は?
■31 BPⅡにおける気分安定薬の重要性と抗うつ薬の併用は?
■32 BPDとBPⅡの異同は?
■33 体重増加の管理は?
■34 診断の留意点は?
■35 躁転の扱いは?
■36 混合性エピソードは?
■37 躁病の治療は?
■1 双極性障害とは何ですか?
脳科学の変化で起こります。この疾患にかかっている人に欠点があるためでもなく、「弱さ」や不安定な人格のために起こるものでもありません。治療できる医学的疾患であり、そのための薬剤利用が多くの患者に役立っています。
■2 どのように診断されるのですか?
臨床検査などの検査手段がありません。同時に起こっている症候群に基づいて診断します。現在の症状のほか過去に経験した症状をすべて慎重に把握する必要があります。
■3 双極性障害の症状はどのようなものですか?
気分が周期的に変化する病気です。気分エピソードには、躁病エピソード、軽躁病エピソード、大うつ病エピソード、混合性エピソードの4種類があります。
■4 双極性障害のパターンとは何ですか?
患者によってエピソードの発生頻度や回数が異なります。双極Ⅰ型障害では躁病又は混合性エピソードのほか必ずといってよいほどうつ病を経験します。双極Ⅱ型障害では軽躁病とうつ病エピソードだけ経験して完全な躁病又は混合性エピソードを経験することはありません。急速交代型双極性障害では躁病、軽躁病、混合性又はうつ病エピソードのいずれかの組み合わせで1年に4回以上のエピソードを経験します。
■5 双極性障害と混同されたり併発する精神医学的状態はありますか?
さまざまな不安障害と精神病性障害(統合失調症や分裂惰動性障害等)など他の障害と混同される可能性があります。併存している障害の中で最も多いのは物質乱用障害、強迫性障害及びパニック障害です。
■6 双極性障害はいつ始まるのですか?
通常、青年期か成人期の早期に始まりますが、ときには小児期の早期や40代、50代の中年期にも始まることがあります。
■7 できる限り早い時期に双極性障害を診断し治療することが大切なのはなぜですか?
早期の診断と適切な治療を受け、最善の薬剤をみつけることで、「自殺、アルコール・物質乱用、夫婦間の問題と仕事に関する問題、不適切・不十分又は部分的な治療、治療困難」の問題を避けるために役立つと考えられるからです。
■8 双極性障害の原因は何ですか?
単一の原因として証明されたものはありませんが、脳内の一部の神経細胞の機能や神経伝達物質にみられる異常が原因であることが研究から示唆されています。
■9 双極性障害は遺伝しますか?
家族に遺伝する傾向があります。
■10 双極性障害はどのように治療するのですか?
急性期にこのエピソードを終わらせることが治療の目的となり、その後のエピソードを予防するために長期間にわたって治療を続けます。治療には「薬物治療」、「教育」、「精神療法」の3つの構成要素があります。
■11 薬剤の種類はどういうものがありますか?
症状をコントロールするために使用する重要な薬剤には「気分安定薬」、「抗うつ薬」、「抗精神病薬」の3つの種類があります。
■12 気分安定薬とは何ですか?
1)躁病又はうつ病の急性エピソードを軽減する。または発生を予防する。2)うつ病又は躁病を悪化させず周期を頻繁にしない。という2つの特性を持つ薬剤を気分安定薬といいます。リチウム、バルブロ酸及びカルバマゼピンがこの定義に適合することが示されており、リチウムとバルブロ酸が最もよく確立され、広く使用されている薬剤です。
■13 抗うつ薬とは何ですか?
うつ病の症状を治療する薬剤です。双極性障害には抗うつ薬は気分安定薬と一緒に使用しなければなりません。気分安定薬を併用しないで使用すると、抗うつ薬が双極性障害の患者を躁状態にする可能性があります。
■14 抗精神病薬とは何ですか?
非常に重度のうつ病や躁病エピソードにときどき起こることがある幻覚や妄想などの精神病症状をコントロールするために使用されます。精神病症状がない場合でも、特に治療の早い段階で不眠、不安及び焦燥感に対して鎮静薬として使用できます。また、気分安定薬への反応を高めるために追加して使用されることが少なくありません。
■15 急性躁病エピソードに対する気分安定薬の選択は何ですか?
一次選択薬はリチウムとバルブロ酸です。混合性エピソードや急速交代型双極性障害の患者にはバルブロ酸が好まれます。リチウムとバルブロ酸を併用することも稀ではありません。
■16 気分安定薬はどれくらい速く効きますか?
気分安定薬が良好な効果を現すまでには2、3週間かかります。躁病エピソードに起こることが多い不眠や不安、焦燥を即座に軽減してくれる補助薬としてベンゾジアゼピン系鎮静薬や抗精神病薬などの選択肢があります。
■17 急性うつ病に対する抗うつ薬の選択は何ですか?
軽度のうつ病は気分安定薬単独で治療することができますが、重度のうつ病には通常は抗うつ薬が必要となります。双極性障害では抗うつ薬は周期の頻度を高めたり、患者の気分を発作させてうつ病から軽躁病や躁病に転換させることがあるため、抗うつ薬を単独で使用することは危険です。このため双極性障害では気分安定薬を必ず併用しながら抗うつ薬を投与します。
■18 電気けいれん療法はどのようなものですか?
電気けいれん療法は、自殺念慮の強い患者、非常に重症で薬剤が効いてくるまで待てない場合、さまざまな薬剤を試したにも関わらず効果がない場合、他に病気があったり妊娠しているために薬剤が安全に使用できない場合、精神病(妄想又は幻覚)がある患者には、重要な選択肢です。慎重にモニターできる医療環境の中で、麻酔下で行われます。多くの場合、2、3週間かけて6~10回にわたって治療を行います。最もよくみられる副作用は一時的な記憶障害ですが、治療の過程で記憶はすぐに戻ります。
■19 どのようなときに入院が必要になりますか?
1)自殺念慮、殺人傾向、攻撃的衝動もしくは行動があるため、安全性に問題がある場合、2)重度の悩み又は機能障害があり、24時間を通して医療や支援が必要な場合、3)物質乱用がみられ薬物に手を出さないようにするため、4)薬剤に対する患者の反応を綿密に観察する必要がある場合
■20 治療に役立つことはありますか?
1)安定した睡眠パターンを維持すること、2)いつもの行動パターンを維持すること、3)アルコールや不法な薬物を使用しないこと、4)家族と友人の支援を得ること、5)仕事のストレスを減らすように努力してみること、6)新たに発生する気分エピソードの早期の警告兆候に気付くようになること
■21 治療をやめたいと思うときはどうすればよいですか?
治療が効いていないと感じたり不快な副作用が起きていると感じた場合には医師に伝えてください。自分で薬剤を中止したり、用量を調節してはいけません。第2の選択肢を準備するようためらわず医師に相談してください。
■22 どの位の頻度で医師と話せばいいのですか?
躁病又はうつ病の急性期には症状と薬剤の用量及び副作用をモニターするために大半の患者は週に1回医師と話しています。症状が回復するにつれて話す回数は減ります。1)自殺したい気持ちや暴力的な感情、2)気分、睡眠、エネルギーの変化、3)薬剤の副作用の変化、4)風邪薬や鎮痛剤などの大衆薬を使用する必要がある場合、5)急性の全身性の病気や手術又は高度な歯科治療が必要な場合、他の薬剤を変更する必要がある場合は、予約日以外でも医師に相談してください。
■23 精神療法にはどういうものがありますか?
精神療法は生活上の問題にうまく対処し、自己イメージと人生の目標の変化を甘受してこの病気が重要な人間関係に及ぼす影響を理解することを助けます。1)行動療法、2)認知療法、3)対人関係療法、4)社会リズム療法の4種類が研究されており、うつ病の急性期と回復期に特に有用です。
■24 現状
◆1)双極性障害を一旦発症すると、患者は残りの人生の約20%を病相に費やすと言われ、病相自体による不利益以外に、多大な心理・社会的問題を負うことになる。
◆2)双極性障害は、それまで社会人として何の問題もない生活を送っていた人を突然襲うこともある病気だが、その後の治療次第で、何とか病気を乗り越えて元通りの社会生活が送れるようになる人から、「精神病者」として精神病院で一生を過ごすようになる人までいる。
◆3)治る疾患というイメージはほとんどなく、特に双極性障害患者の場合、躁・うつの症状は性格として理解され、本人にふさわしくない職業生活を送るのは容易でない。
◆4)少し前まで営業マンとして一流企業で好成績を上げていたのに、ラピットサイクリングが止まらず精神病院に長期入院となり、家族にも次第に見放され、悔しい想いをして泣いている患者の例もある。
■25 双極性障害の位置付け
◆1) 従来
・周期的に経過して人格の欠陥を残さない精神病(19世紀末クレペリン)
(慢性に経過して人格に欠陥を残す統合失調症と併せて2大精神病という)
◆2) 現状
・感情障害の最重症型
(双極性障害の治療法は確立しており、ほとんどの患者では治療が有効)
■26 障害の診断
◆1)中間的、臨床的および法学的場面ではDSM-Ⅳに、行政的場面ではISD-10に準拠するのが妥当である。
◆2) 診断
・DSMⅣーTRでは、双極性障害をbpⅠとbpⅡに分けている。
・bpⅠとbpⅡを区別するものはその躁病相の程度の差異である。
・bpⅠとbpⅡのいずれの診断基準でも、躁状態・うつ状態の最中に精神分裂病様症状が出現してきてもよい(非定型精神病概念の一部が双極性障害に含まれる)。
・経過型の特定用語としては急速交代型、季節型がある。
・1年に4回以上も躁・うつを繰り返す状態は「ラピッドサイクリング」と呼ばれている。
◆3) 発症
・躁病相で発症するよりもうつ病相で発症となることが多く、数回のうつ病相の再発を見た後に躁病相が出現するという経過が目立つ。
◆4) 再発
・最初のエピソードの始まりから2度目のエピソードの始まりまで、平均で4年以上ある。
・エピソードを繰り返すたびに、その間隔は短くなる傾向がある。
・躁うつ病の患者の中でも約5%の患者は躁病相のみを繰り返して経過する。
◆5) 割合
・多幸性の躁になるのは双極性の患者の40%以下である。
・多幸性の患者の3分の1は幻覚と妄想を抱く。
・双極性障害の約60%をbpⅡが占める。
・bpⅠよりbpⅡは自殺を試みる割合が15~19%高い。
・bpⅠよりもbpⅡは混合性のエピソードが多く、急速交代型に発展する率も高い。
・双極Ⅰ型(躁うつ病)の患者の60%はアルコールまたは薬物の依存症である。
・女性の双極性患者は男性の双極性患者に比べて3倍多くうつ病エピソードを経験する。
◆6) 障害の程度
・双極性障害による障害の程度は、統合失調症よりは軽度であるが、うつ病より重く、糖尿病、高血圧、リウマチといった慢性の身体疾患よりも強い。
■27 遺伝
◆1)躁うつ病は100人に一人くらいが一生のうちにかかることがある。
◆2)近い血縁者に躁うつ病の患者がいる場合は発症率は平均より10倍も高くなる。
◆3)躁うつ病の患者さんの子どもは2~10%位の割合で同じ病気になる。
◆4)一卵性双生児では一人がかかるともう一人は70~90%の割合で発病する。
◆5)発症年齢は、単極性うつ病より約10年早く、これまでの経過研究では28~33歳となっている。
■28 維持療法
◆1)再発性の高い疾患であり、再発に伴い疾病的復帰だけでなく社会的復帰も不良となるため、急性期治療のみならず再発予防のための維持療法が重要な課題となる。
◆2)米国エキスパートコンセンサスガイドラインは長期あるいは生涯続行するとしている。
◆3)予防治療中に躁病エピソードやうつ病エピソードが得られた場合には病相の重要度が高い場合には、躁病の急性期あるいはうつ病の急性期の治療に準じて、抗精神病薬あるいは抗うつ薬を併用する。
◆4)症状が軽快すれば、それに応じて抗精神病薬や抗うつ薬の減量、中止して、それまでの気分安定薬による予防療法が有効であると判断されれば気分安定剤単剤による治療に戻し、無効あるいは効果が不十分と考えられれば気分安定剤の切り替えあるいは併用療法も考慮する。
■29 向精神薬の概念
向精神薬(psychotropica)は、精神に作用する薬物の総称。WHOは「その物質の主要な作用として、精神機能、行動あるいは経験に影響を与える薬物」と定義。
▼向精神薬は中枢神経に対する作用が一次的で精神機能や行動に変化をもたらす
▼そのうち精神治療薬は主に精神障害の治療に使用する
向精神薬
●1 催幻覚薬
●2 精神治療薬
◆1) 抗精神病薬
◆2) 抗うつ薬
◆3) 気分安定薬
◆4) 抗不安薬
◆5) 睡眠薬
◆6) 抗てんかん薬
■30 BPⅠとBPⅡの疾病概念
<総括>
BPⅡについては、うつ病から区別されBPとして気分安定薬で治療開始された時点で大きな治療方針の転換がなされています。BPⅠとの実用上の相違は精神病性の特徴を伴うか入院治療を要するかどうかの2点で区別されています。
<両者の違い>
◆1) 両者はいずれも躁病相とうつ病相を繰り返す疾患
◆2)両者は大うつ病エピソードの診断基準を満たすことが必要
◆3) 両者を区別するものは躁病相の程度の差異
・BPⅠは躁病相が躁病エピソードの基準を満たす症例
・BPⅡは躁病エピソードが軽躁病エピソードの範囲に留まる症例
◆4) 両者の診断基準の症状群は全く同一
◆5)軽躁病エピソードと躁病エピソードの違いは単純に軽重の問題、量的相違
◆6)実用上は、精神病性の特徴を伴うか入院治療を要するかどうかの2点で区別
<BPⅠの概念>
◆1) 一般的な薬物治療
・躁病相急性期にリチウムと抗精神病薬で治療
・寛解期はリチウムで維持
・躁病相、うつ病相を呈したときはそれぞれ抗精神病薬、抗うつ薬を使用
・抗精神病薬によるうつ転、抗うつ薬による躁転やラピッドサイクリングを誘発
◆2) 特徴
・社会的逸脱行動、対人関係破壊、職業的機能障害
・再発性が高く、疾病的転帰だけではなく社会復帰も不良
・維持療法が重要な課題
<BPⅡの概念>
◆1) 一般的な薬物治療
・BPⅠよりさらに未確立の部分が多い
・うつ病相の急性期治療にはやはり抗うつ薬が有効
・漠然とした抗うつ剤の投与は一部の患者で混合状態やラピッドサイクリングを誘発
◆2) 特徴
・病像の非定型性(典型的なうつ症状、過眠、過食、他罰的、攻撃的等)
・芸術家などに多く、創造性に富み、嵐のような波乱万丈の生涯
◆3) 分類の経過
・1970年(Dunnerらが命名分類を提唱)
BPとDの2分法に収まらない類型
うつ病で入院しかつ入院に至らない軽躁病の既往のある者
・1994年(DSM-Ⅳ)
公式な診断カテゴリーとして認定
■31 BPⅡにおける気分安定薬の重要性と抗うつ薬の併用
BP治療での気分安定薬の重要性が高まりつつある理由の一つとして、リチウムがBPの自殺のリスクを7分の1から13分の1程度に減じていることがあげらます。一方で抗うつ薬にはプルセボと比べてこのような自殺予防効果がないことが次第に明らかになりつつあります。
抗うつ薬と気分安定薬の併用による維持療法は気分安定薬単独での維持療法に失敗した際に選択されるべきであるという考え方はあくまでも参照程度に留めるべきです。抗うつ薬の併用は有意にうつ病エピソードの再発を予防しており、抗うつ薬の併用による躁病エピソードでの再発の危険性の増加は認められないとする調査結果も報告されています。
■32 BPDとBPⅡの異同
<総括>
BPⅡ(双極性障害Ⅱ型)をBPD(境界性人格障害)と誤診されて不適切な治療を受けている例が多数認められる。あらかじめ双極性障害の可能性を念頭に置かないかぎり、BPDと誤診する危険性が大きいと思われる。
<BPDとBPⅡの関係>
◆1)軽躁状態はそもそもDSM-Ⅳでは診断がつかず、易怒性や不機嫌として現れた軽躁状態は、BPDの症状と混同されがちである。
◆2)思春期の双極性障害では、成人と異なって躁うつ混合状態が多く、思考障害のような精神病症状は少ないため、思春期では特にBPDと誤診する危険性が高い。
◆3)病前性格が循環気質である場合も、双極性障害Ⅱ型はBPDと診断されやすいとされる。
◆4)不適切な向精神薬や飲酒などで病像が修飾されると、双極性障害の診断がさらにつけにくくなるといわれている。
<診療上の留意点>
◆1) 治療者と患者
(BPD)治療者の態度に過敏に反応して混乱、不安定
(BPⅡ)治療者の状況や気持ちを察して機転をきかせたり、気遣いを示す
◆2) 問題行動(自傷行為や大量服薬など)
(BPD)攻撃性の行動化、自責・自罰
(BPⅡ)一種の自己治療的な対処行動
◆3) 面接
(BPD)内省・力動的
(BPⅡ)現実を重視(自分の資質に合う行動へ修正する方向を探る)
<薬物治療上の留意点>
◆1) 感情調節薬(気分安定薬)を必ず用いる
◆2) ベンゾジアゼピン系抗不安薬は極力避ける
(特に易怒性、衝動性、攻撃性が生じやすくなる)
◆3) 抗うつ薬は単独投与しない
(三環系は避ける・急速交代化や躁転を来たす)
■33 体重増加の管理
<気分安定薬>
優れた臨床効果があるが、長期使用により望ましくない体重増加
→現在の薬剤を続けながら食事療法や運動で体重を減量
<非定型抗精神病薬>
患者は劇的に改善したが、食事療法と運動にも関わらず着実に体重が増加
→別の非定型抗精神病薬に切り替えるか、現在の用量を徐々に減量
■34 診断の留意点
<DSM-Ⅳ-TR>
◆1) 双極Ⅰ型障害
・「1つ以上の躁病エピソード、または混合性エピソードが起こることで特徴づけられる臨床経過である」
・大うつ病エピソードの出現は問わず、また躁病エピソードが単発性でも診断可能である。
◆2) 双極Ⅱ型障害
・「少なくとも1回の軽躁病エピソードを伴い、1回またはそれ以上の大うつ病エピソードの発症によって特徴づけられる臨床経過である」
・大うつ病エピソードの出現が診断に必要となる。
<ICD-10>
◆1) 双極性感情(躁うつ病)障害
・「患者の気分と活動性の水準が著しく乱される躁病エピソードを繰り返す(少なくとも2回)が特徴」
・DSM-Ⅳ-TRと同様に単極性躁病も含ませているが、単一エピソードの場合は双極性障害と診断できない。
・DSM-Ⅳ-TRでは、双極Ⅱ型障害と分類されるようなうつ病エピソードの直後にその治療とは関係なく軽躁病エピソードが出現する場合は、ISD-10では双極性障害とはせず反復性うつ病性障害の中に分類される。
■35 躁転の扱い
<DSM-Ⅳ-TR>
・直接的影響がある場合
・物質誘発性気分障害:躁病の特徴を伴う
<ICD-10>
・軽躁病がうつ病エピソードの直後にみられる場合、明らかに抗うつ薬で誘発されたと思われても、反復性うつ病性障害とみなす
■36 混合性エピソード
<DSM-Ⅳ-TR>
・躁病エピソードと大うつ病エピソードを同時に満たす
<ICD-10>
・軽躁病、エピソード交代も含む
※多くは数週間~数ヶ月続き「寛解あるいは大うつ病エピソードへ発展することはあるが、躁病エピソードへ発展することは極めて稀である」
■37 躁病の治療
<治療処方の選択>
◆1) 精神病を伴う躁病 気分安定薬+抗精神病薬
◆2)気分不快性躁病または真性混合性躁病 気分安定薬単独
◆3)多幸性躁病 気分安定薬単独(または気分安定薬+ベンゾジアゼピン)
◆4) 軽躁病 気分安定薬単独
(注)
◇1) 気分不快性躁病
患者に躁病エピソードを認め、うつ病の診断基準のうち2~4項目に適合するが、現行の大うつ病エピソードの診断基準には適合していない
◇2) 真性混合性躁病
患者は躁病エピソードと大うつ病エピソードの両方の基準にすべて適合している
◇3) 多幸性躁病
患者に躁病エピソードを認め、うつ病の特徴はみられない
<気分安定薬の選択>
◆1) 精神病を伴う躁病 バルプロ酸(またはリチウム)
◆2)気分不快性躁病または真性混合性躁病 バルプロ酸(またはリチウム)
◆3) 多幸性躁病 リチウム(またはバルプロ酸)
◆4) 軽躁病 リチウムまたはバルプロ酸
<抗精神病薬の選択>
◆1) 精神病を伴う躁病
オランザピン、高力価従来型抗精神病薬、リスペリドン
◆2) 気分不快性躁病または真性混合性躁病
オランザピン、リスペリドン
◆3) 多幸性躁病
オランザピン、リスペリドン
◆4) 軽躁病 気分安定薬単独
一次選択なし
<部分的反応に対する第2の気分安定薬の追加>
◆1) 気分安定薬
・最初の気分安定薬に対して1~2週間以内に全く反応しない場合、別の気分安定薬を追加するか、これに切り替える
・部分的反応が得られている場合には、2~3週間後に第2の気分安定薬を追加する
◇1) バルプロ酸→リチウムを追加
◇2)リチウム→バルプロ酸(またはカルバマゼピン)を追加
◇3)カルバマゼピン→リチウム(またはバルプロ酸)を追加
◆2) 抗精神病薬
・最初の抗精神病薬に全く反応を示さない場合は、5~10日間だけ待ってから変更する
・部分的な反応がみられる場合は、その抗精神病薬を1~2.5週間続けてから別の抗精神病薬に変更する
◇1)従来型抗精神病薬→非定型抗精神病薬に切り替える
◇2)非定型抗精神病薬→従来型抗精神病薬または別の非定型抗精神病薬に切り替える
<治療抵抗性が持続する場合>
◆1) 精神病を伴う躁病
ECTに切り替えるまたは現在の薬剤を使いながらカルバマゼピン等を追加
◆2) 重度の躁病、非精神病性
現在の薬剤を使いながらカルバマゼピンを追加またはECTに切り替える
◆3) 中等度または軽度の症状が残っている
現在の薬剤を使いながらカルバマゼピンを追加
<躁病エピソード後の長期維持治療>
◆急性期に有効であった処方をそのまま続けることが最善
・リチウム単独→リチウム単独
・バルプロ酸単独→バルプロ酸単独
・リチウム+バルプロ酸→リチウム+バルプロ酸
※症状が現れた場合のステップ
現在の薬剤を増量→別の気分安定薬を追加→補助的治療を追加
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